誰もが宇宙で生活できる世界を実現する
株式会社ElevationSpace
代表取締役CEO 小林 稜平様 インタビュー
宇宙というテーマには、どのように出逢われたのでしょうか?
小林:私は秋田出身で、中学1年生のときに東日本大震災を経験しました。そのとき、震災や災害に強い街づくりをしたいと考えたことがきっかけで、高専では建築分野を選びました。高専5年生の頃、東北大学への編入が決まっていたのですが、新しいことを学びたいという思いがあり、次に取り組むテーマを模索していました。そんな中で偶然出会ったのが、これまで考えたこともなかった「宇宙建築」という世界でした。
宇宙建築というのは、宇宙ステーションや月面基地のように、地球外で人が活動するための構造物を指しています。研究を進める傍ら、国内のコンペティション「宇宙建築賞」に応募し、最優秀賞を受賞したこともあります。宇宙建築に取り組む中では、単なる建物の設計だけではなく、ロケットなどの移動手段、食料や電力の確保、滞在期間など、エコシステム全体を考えるということ、つまり、「人が宇宙で生活できる世界を実現する」ということに重きを置いていました。作りたい世界から逆算し、次に何が足りないのかを考えていく中で、最も重要だと思ったのが「宇宙で実験・実証を行い、その結果を地球に還元するためのプラットフォーム」でした。そこから現在の事業にたどり着きましたね。
私は人生をかけてこの会社を成長させていきたいと考えていますし、30年、40年という長期的なスパンで事業を見据えられることは、私の若さが持つメリットの一つだと感じています。

向き合っている課題はどのようなものですか?
小林:一つ目の課題は、人が宇宙で生活することを考えたとき、無重力環境をどのように活用するか、また宇宙環境がもたらす影響をどう理解するかという点です。それ故に、宇宙での研究開発や製造分野の取り組みを加速させることが重要なテーマだと考えています。
もう一つの課題は、地球と宇宙の産業をつなぐためには、行くだけでなく「戻ってくること」が不可欠であるということです。人が宇宙に行って帰ってくることはもちろんですが、宇宙で生まれた成果を地球に持ち帰り、還元することが大切です。これまでは国が国際宇宙ステーション(ISS)というプラットフォームを運営してきましたが、その運用が終了し、2030年には民間に移行するというタイミングを迎えています。
ElevationSpaceを立ち上げた2021年当時、競合と呼べる企業はほとんど存在しませんでした。しかし、このトランジションのタイミングで、世界中で競合企業が一気に増えてきたという印象があります。

その中で貴社のテクノロジーにおける強みとはなんでしょうか?
小林:弊社のコア技術は、宇宙から地球に戻ってくる「再突入技術」にあります。主に5つの技術で構成されており、それぞれが重要な役割を担っています。
・衛星のバスシステム技術
・軌道上の衛星を減速させるエンジン技術
・大気圏突入時に燃え尽きない耐熱技術
・パラシュートなどを活用し、海上で安全に回収する技術
・回収した衛星を再利用する技術
また、私たちは現在の領域にとどまらず、日本初の有人宇宙船の開発を目指しています。弊社の最大の強みは「戻ってくる技術」だけではなく、エンジン開発も手がけ、宇宙に行った後のモビリティサービスを提供しようとしている点です。人工衛星は、宇宙に到達した後が本格的な運用のスタートになるので、真空や高放射線などの宇宙環境に耐えられる高い品質とスペックが求められます。例えば、ロケットは大気環境で製造されるのに対し、衛星はクリーンルーム内で製造されるなど、厳格な品質管理が必要です。私たちは、このようなロケットの先のモビリティという高度な技術に挑戦し続けています。

さらに、私たちは、東北大学学際科学フロンティア研究所と共同で、安全性と経済性を維持しながら高い推力を実現する小型衛星用スラスタの実用化に向けた研究を進めています。
世界初の宇宙実証を目指し、小型衛星の地球帰還を可能にする “ハイブリッドスラスタ” の開発に取り組んでいます。JAXAの協力のもと、実機に近い試験モデルによる長時間燃焼試験や、真空環境下での軌道離脱相当の推力計測にも成功し、これについてはプレスリリースを発表しています。ぜひご覧いただけると嬉しいです。

宇宙業界に興味を持っているエンジニアの方々へのメッセージをお願いします。
小林:私たちは、宇宙へ行った後の交通網を構築することに取り組んでいます。
中でも一番のポイントと言えるのは、本気で有人宇宙船を開発しようとしているということでしょうか。それをやりたくて入ってきたエンジニアの方も少なくありません。そのためにまずは無人での帰還技術を確立するところからスタートしています。
実は、小惑星探査機「はやぶさ」やHTV搭載小型回収カプセル「HSRC」のように、小型カプセルを制御しながら高精度に地球に戻す技術は、日本が世界最先端の強みを持つ分野の一つです。この技術は今後、グローバルに通用する事業へと成長していくと考えています。
私たちは「衛星を自分たちで作る」という強い思想を持っています。一般的な衛星メーカーでは、エンジンを外部から購入することも多いのですが、それでは細かな改良が難しくなるんです。その点、私たちは耐熱材料、エンジン、電気系すべてを自社で開発しており、ものづくりに徹底的にこだわる会社です。その分、難しいことやチャレンジングな要素も多いですが、それを楽しめる方にぜひ加わっていただきたいと考えています。

企業情報
会社名 | 株式会社ElevationSpace |
代表者 | 代表取締役CEO 小林 稜平 |
拠点 | 〒980-0013 宮城県仙台市青葉区花京院2-1-65 いちご花京院ビル9階 |
事業開始 | 2021年 |
事業内容 | 宇宙環境利用・回収プラットフォーム事業、宇宙輸送事業、宇宙建築事業 |