宇宙を安心して使い続けるために – 直面しているデブリという課題

Star Signal Solutions株式会社
取締役 秋山祐貴様 インタビュー

貴社が向き合っている社会課題としてのデブリとは一体どういうものなのでしょうか?

秋山:宇宙空間には、衛星やロケットの部品などの「デブリ」と呼ばれる人工物が数多く存在し、秒速3~8kmの猛スピードで地球の周りをまわっています。宇宙空間はとても広いのでデブリとは衝突しないと思われがちですが、実際には衛星にデブリが衝突したり、衛星同士が衝突して新たなデブリが生まれる事例も起きています。
そのため、衛星運用者は本来のミッションとは別に、日常的にデブリの「衝突回避」を行わざるを得ない状況にあります。

地球から比較的近く、多くの人工衛星が集中する低軌道と、通信や放送に使われる重要な衛星が運用されている静止軌道では、デブリの挙動や前提条件 は異なりますが、いずれもリスクの高い領域として問題になっています。

その中で、課題感はどこにあるのでしょうか?

秋山:私たちが向き合っている大きな課題は、「今、見えているデブリが全てではない」という点です。
1cm以上のサイズのデブリが人工衛星に衝突すると衛星はかなりのダメージを受けるといわれています。最悪の場合、衛星は全損し、新たなデブリが生まれてしまいます。 統計的には1cm以上のデブリは約120万個存在すると言われていますが、実際に軌道まで把握できているのは数万個程度です。つまり、9割以上は存在を認知できておらず、避けようにも避けられない状況があります。

また、安全保障の観点 もあります。
現在、人工衛星やデブリの接近に関するアラートの多くは米軍が無償で提供してくれて います。彼らは世界中に観測網を持っていて、「近づく」という事象が発生した時に、「どの物体が、どのくらい近づくのか、どのくらいの確率で当たりうるのか」を教えてくれています。
ただ、国際情勢の変化などによって、いつまでも同じ形で提供され続けるという保証はありません。そういった意味でも、自国内で観測・解析できる能力を持ち、主体的に状況を把握できる体制を整えておくことが大切だと考えています。

こうした課題に対して、どのような取り組みをされているのでしょうか?

秋山:一つ目は、見えていない小さなデブリを「見える化」することです。

光学望遠鏡を用いて撮影した宇宙空間の画像から小さなデブリも含めてたくさんのデブリを検出し、それらの軌道を解析します。こうして得られた情報を観測データや軌道データとして整理することで、これまで見えていなかった小さなデブリも含めて、「どこを飛んでいるのか」が分かる状態をつくっています。


二つ目は、デブリを回避するための判断を支援するアプリケーションの提供です。

衛星運用者にとって重要なのは、「デブリがどこにいるか」だけでなく、「どう避ければよいか」という具体的な判断ができることです。私たちは、運用者がミッションを遂行しながら、確実にデブリを回避できるような情報と判断材料を提供しています。
米軍のアラートは非常に有効なのですが、「危険な接近がある」という通知が届いたあと、どのように回避するかは各運用者に委ねられています。そこを支えるのが私たちの役割です。

貴社ならではの強みはどこにありますか?

秋山:私たちの強みは、JAXAベンチャーとして、JAXA時代に培った技術と現場経験に、独自の技術開発を重ねてきた点にあります。技術と現場感がしっかり結びついていることが特徴です。

光学写真から暗い物体を見つけ出す技術は、特に小さなデブリを捉えるうえで重要です。大きな物体は比較的明るく写るため検出しやすいのですが、小さく暗いものはノイズに埋もれてしまいます。ここを見極められるのは、長年の解析ノウハウがあるからこそだと考えています。

また、デブリ回避のアプリケーションについても、単なる理論ではなく、実際の衛星運用を前提としたサービス設計ができる点が強みです。現場を知らなければ「やってはいけない避け方」もあり、その感覚は経験則としてしか身につきません。こうした現場感を含めた設計が、他社との差別化につながっていると感じています。

この業界はSSA(宇宙状況把握)と言いますが、アメリカやヨーロッパが先行していて、残念ながら日本は5年〜10年遅れている状況です。日本でSSAを本業としてやっている会社はかなり限られていて、私たちが最初に始めたというレベルですから、時間軸的にも一歩リードしているという自負があります。

(写真中央:取締役 秋山祐貴様 写真右:代表取締役 岩城陽大様)

宇宙業界を志す人たちに向けてメッセージをお願いします。

秋山:私たちが取り組んでいるのは、マスコミなどで皆さんがよく見かける華やかな宇宙開発とは少し異なる仕事です。宇宙ロケットの打ち上げの成否や、衛星の運用についてはフォーカスされがちですが、デブリの衝突リスクやそのリスクをどう回避するかという点については、まだあまり知られていないのが現状だと思います。
宇宙を題材にしながら実社会のためになる地に足のついたビジネスを展開しているので、そういったところに魅力を感じていただける方と一緒に働きたいですね。

私たちはまだ創業初期のフェーズなので、ある意味なんでもできる状況です。なんでもできるからこそ、チーム一丸となって、本当に役に立つものを作っていきたいと考えています。
現実に役立つ仕事に挑戦したい方に、ぜひ知っていただけたら嬉しいです。

企業情報

会社名Star Signal Solutions株式会社
代表者代表取締役 岩城 陽大
拠点〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1丁目29‐9 ネオテック水天宮​ビル4階
事業開始2023年10月17日
事業内容観測サービス/軌道解析/衝突回避ナビゲーション/宇宙物体データベース

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